1階。あまり人はいない、その理由が目の前に。
「応接室…まぁ、玄関以外のうろつきの少なさといえばここしかない、か」
「で、そんなうろつきの少ないところで君は何してるの?」
「散策」
後ろで小さく響いた金属音から逃げるように身を翻す。
恭くんが眉間に皺を寄せて見下ろすようにこちらを見ていた。両腕には金属音を出したトンファー。
「もう下校だよ、部活動も無し。第一、、入ってないだろ?」
「うん」
「何してるの?咬み殺されたいの、分かっていてうろつくなんて」
うーん、なんか違うんだけど。説明しても無駄なのは知っているし説明するのが面倒だ。手っ取り早いのは物品を押
し付けて、逃走。これしかない。見たところ応接室の中で驚いたような困ったような、何ともいえない表情を浮かべた 草壁副委員長以外に風紀委員はいない。外の巡回でもしているのだろう。1:2(実質的な1:1)なら逃げ切れる自身 も余裕もある。当然、襲われたときの話。
「で、は何しに来たの?」
「はい」
「はい、って…ちょっと、これ」
あとは逃げよう。一気にUターンして玄関まで一直線。
応接室の前で一際大きく金属音がした。
「…、僕に直接モノを渡すなんて勇気あるね?」
「だって私だものー」
もう靴箱は目の前です。風紀委員にも捕まらない。
「ばいばい!」
「…!ちょっと、人の話聞きなよ?……やっぱり君は咬み殺す!」
わぁ怖い。校門の目の前で後ろを振り向くと、案の定というべきか恭くんは玄関で両手を腰に当てトンファーを光らせ
ていた。でも、やっぱり追えないんだ。
片手に引っ掛けられていたのは、直前に上げた包み。
09/02/15
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